ヒトはどこまでキカイか

奈良にきた鹿

先日,OBで現在京都大学医学研究科に所属する鹿内君が当講座を訪問してくれました.
彼筆頭の論文 Prediction of aperiodic target sequences by saccades は既にonlineでは出版されています.
http://dx.doi.org/10.1016/j.bbr.2008.01.019
ヒトが眼球運動系(この研究ではサッカード系)を用いて,定常なダイナミクスに支配された物体運動を予測しようとするとき,短時間の運動パターンをまる覚えして利用しているのでしょうか,それともそのダイナミクスを(未知なら学習して)利用しているのでしょうか.この論文では,視標運動生成に離散時間定常確率過程(具体的にはAR過程)を用いることで,理論的に実験計画や解析を行い,後者が可能であることを示唆する結果を示しています.但し,どうも簡単な場合(具体的には1次のARモデルまで)しかこれが可能でないようなんですね.

ヒトはどういった条件(環境や状況と言ってもいいでしょう)までは理論的に最適な行動を取ることができるのか? これを調べてゆくことで,ヒトのヒトらしさが見えてくる,エキサイティングな疑問です.これまで,腕の到達運動や初期視覚などで最適性が発揮される事例がいろいろと見つかっています.

ヒトがどれほどテキトーか? これを調べるのも勿論非常に重要であり,計算理論で言えば,どのような近似計算をしているのか,どのようなコスト関数を使って最適化しているのか,どのような情報表現を用いているのか,などの観点から研究を進めることになります.

最終的には,ヒトがどんな風にキカイとテキトーを使い分けているか.これを知りたい! 
#これは改めてキカイと定義し直せるケースも多いはずだと思っていますが.