頭脳立国でなくてどうする

このままでは日本はインドに負ける.

資源に乏しい日本は生き残るために頭脳立国しかない.アニメを含む芸術や文化では食えないだろう.歴史を見れば,芸術や文化は富めるパトロン戦勝国の下に転々と移動したのであって,国富を生み出したわけではなかった.今のAppleの隆盛は,その技術力や発想力,行動力などにあるのであって,膨大なコンテンツはその道具に過ぎない.

学級崩壊し,ニートが溢れ,理系離れが進む日本の将来を国民全員が本気で憂えているか?

翻って,200年以上の長きにわたりイギリスの植民地支配下にあったインドの今はどうか.昨晩,NHKで「インドの衝撃」という番組を放送(再放送?)していた.貧困の中,ガンジー達が政治犯として収監された牢獄からスタートしたIITは,首相主導の頭脳立国戦略により,超エリート大学IIT(当時数学・化学に選択と集中?)として花開いた.

番組では,小学校で算数を好きにさせるためのユニークな教育を紹介していた.授業の用語は英語で,子供もなかなか流暢であった.私の友人も,母国語では研究の話は全くできないと言っていた.翻ってうちの,いや一般に日本の大学院生の英語力はどうか? 家庭でも数独のようなゲームを楽しんでいる様子が収録されていた.

もちろん,この番組は一部の上流階級の様子に過ぎない.大学進学率は7%だそうだ.貧困層の問題は深刻そうだ.しかし,今のインド経済の勢いや,IITに群がる世界の一流企業リクルータを見れば,その強さは本物だと思わざるを得ない.

貧乏な若者は,スポーツで貧困から脱却しようというのが世界でよくあるパターンだが,インドでは,頭脳で脱却するための格安の塾(年間1万円強の学費)が各所にあるそうだ.特に取り上げられていた,ラマヌジャン数学アカデミーでは,IITを目指した特別コースが用意されており,家賃は塾から援助され,缶詰で毎日16時間勉強に打ち込むそうだ.その合格率たるや90%を超える.ちなみに,ラマヌジャン数学アカデミーの主催者は,ケンブリッジに合格したのにお金がなく入学を諦めた経歴があり,若者にこんな思いをしてほしくないとこの塾を始めたそうだ.

日本国民が今こそ危機感を共有できなければ,遠くない将来,債務不履行国家になるかもしれない.「母を訪ねて三千里」をご存知か.あれは富めるアルゼンチンへイタリア人が出稼ぎに行った時代背景があった.しかし,アルゼンチンが2001年に債務不履行に陥ったのは記憶に新しいではないか.

盛者必衰.

今こそ危機感を共有しよう.IITの(たぶん代表的な)校舎には英語でこう大きく記されていた"dedicated to the series of nations"(インド連邦のすべての州政府のために捧げる).今こそこのような意識と情熱が必要だ.